ケア環境について雑記① たん吸引、マッサージ
前回の記事から趣向を変えて、
母のケアの環境について、どう試行錯誤してるか細々と書いていく。
これはベッドの後ろの壁に貼った、たん吸引とマッサージ・拘縮予防についての簡単なマニュアル。
模造紙を半分に切ったサイズで、とにかく目につくようにした。
ヘルパーさんたちにも割と好評である。
カニューレ(気管切開部分に挿入するプラスチックの筒)とカテーテル(吸引に使う管)の実物をわざわざ貼り付けている。
イメージしやすいからというのはもちろんだが、聞けばうちにやってくるヘルパーさんたちは、重度訪問介護の研修の時にこれらの実物を見たことがなく、「気管に直接に管を挿入して吸引すると思ってた」という人もいた。
なのでこの実物を提示すると「え!これなら大丈夫そう」となるらしい。
それにしても、研修では一体何を教えてるんだろう・・・・
兵庫県内では、ヘルパーが重度の患者の喀痰吸引の研修を受けられるのはおそらくそこしかない。どんなルールのもとでやってるのか知らないが、正直それでいいのか?という感じである。
実地で学ぶのが一番というのもわかるけど・・・。
著作権フリーです。言葉省略しすぎてわかんないか・・・
ちなみに、ヘルパーは仕事として「マッサージ」ができない、という決まりになっている。医療マッサージやリハビリの専門の人がいるし、痛みが出てしまったりした時に責任が取れないかららしい。なので「拘縮予防」という言葉を使っている。かなりグレーな範囲だが、うちの場合専門知識は不要は範疇の話だと思うし、必要なケアなので基本はお願いしている。
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個人差はあると思うが、ALSのケアは、色々忙しい。
うちはケア体制がまだ安定しておらず、人員の入れ替わりも激しいので、前回の記事で書いた通りヘルパーさんの育成コストがかなり高い状態である。
元々は全部、たん吸引もマッサージ(拘縮予防)も口頭で逐一ヘルパーさんたちに説明していたのだが、1回ではなかなか入らないし、伝え漏れも出る。
マニュアル化はケアの責任者のTO DOだ。
それがないと、マッサージについては手癖になるし、たん吸引については、初めての人だったらほぼ必ずパニック状態になる。
(慣れてきたら「よっしゃ!引っかかった!」みたいな、ゲームのような感覚になるのだけど)
とにかく、すぐにパッと参照可能なマニュアルは必要だ。ヘルパーさんと1つ1つ一緒に確認しながら説明すれば後々彼女たちにとっても思い出せる材料が増えて、こちらの説明の手間も省ける。
色々と書ききれない細かい注意点はあるのだが、冊子型の小さいマニュアルになると読むのもめんどうだし(運用がうまくいってる事例をあまり知らない)、いっそ壁に貼ることにした。
こんな感じで、色々微調整しながら環境を整えている。
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以下、関連して長い雑記
よく重度の方の介護の求人などで、「見守り」という文言を見かける。
だけどALSの場合、意識は超絶クリアで、当の本人は体が動かせないことによる様々な不快感を自分で取り除けないことで大変な思いをしているので、本当にただじーっと「見守って」もらうだけでは困る。時々勘違いしている人がいるが。
「いやいや、何しとんねん君」と的確にツッコむ力も、ALS患者にはバリバリあるのである。
なので、特に何もしていないときでも、介助者に協力してもらうことはたくさん存在する。マッサージなどはその典型だ。
家族介護だと、そこがかなりしんどい。
いつもどこかしら体が辛く、ほぐしたりしていないとすぐ固まってしまう上、痰もいつ上がってくるかわからない状態なので、5分と放っておけない。
なので、マジで他のことが何もできない。(洗濯とか、最低限の家事の時などは我慢してもらう)
別に慣れれば難しいことを要求されるわけではないが、家族だからそんなに話すこともないし、長時間ただただ拘束されて自分の時間が持てないのは辛い。
仕事はもってのほかだし、映画や本もどうせ集中できないので、自分がケアに入るときは大して集中してなくてもなんとなく楽しめるお笑い番組ばっかり見ている。
最近はアマゾンプライムでM-1を第1回から全部見返した。・・・いや、ある意味有意義な時間ではあるが、心の底から見たくて見てるわけではない。歴代優勝者ではやっぱりブラマヨが一番かなとか、ジャルジャル頑張って欲しいとか、そんなことはどうでもいい。
同世代が汗水垂らして働いてる中、私は何をやってるのだろうと、時々思う。
とにかく、今の生活はとても続けられないので、色々策を探している。
人間、暇だとろくなことを考えられないようにできている。
母は今、暇なのである。
体が動かなくてもできる遊びや活動など、やったことがないのだからしょうがない。いきなり全部自分で考えろというのも酷だ。
母の外出の機会を増やす、人を家に呼びまくる、意思伝達PCを使ってできることをどんどんやる、体が動かなくてもできる社会貢献を探すなど、
今は少々チャレンジングなことでも、色んな人の手を借りて、挑戦していくしかない。
当たり前のことと、それ以上のことを、きちんと生活の一部にしていく必要がある。
私もとっとと仕事に戻り、なんの気兼ねもせず自分の時間を持ちたいが、口を開けて待っていても誰も餌を放りこんではくれない。
呼吸器をつけて生きる選択をした母と私たちは、現状に文句を言ってばかりいる暇は、あんまりないのである。
なんというか、ALSの介護とはそういう、相手への想像力と、人間としてよく生きたいという欲求と、ただのわがままな気持ちとの戦いだ。
重度訪問介護のヘルパーさんは、何よりも有難い存在である。
家族の代わりに、時に家族以上に母のことを思ってくれる。
現在はいろんな意味で体制が不十分だが、彼女たちがいるおかげで、母も私も周囲の人も、本当に助かっている。
今は色々手を広げて自薦ヘルパーを探している。少しずつだが、集まってくれている。
もっと仲間を増やし、一緒に長く歩んでいける存在として関係性を作っていきたい。
引き続き、頑張ります。
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情報発信を兼ねたブログなので、重度訪問介護の時間数獲得と体制づくりについてとか、ケアプラン、意思伝達装置、QOL向上のための色んな便利グッズとかについても追々書いていきたいです。備忘録。