ALS若者ケアラーのblog

ALS患者の母を持つ20代若者介護者のblogです。

役所へ交渉にいってきた

今日は休みを取って、区役所に行ってきた。

 

なんのためかというと、「時間数」に関する不服申し立てのためである。

 

「時間数」とは何か?

「重度訪問介護」の時間数のことだ。

行政から支給され、その時間を元に民間の訪問介護事業所と契約し、その時間ぶんだけヘルパーさんに入ってもらえるという構造になっている。

時間ごとに単価が決まっており(これらは複雑な計算式からなるので1時間なんぼとかはよくわからない)、事業所が国に申請をすることにより時間分の介護報酬を得ることができる。

 

この「時間数」によって、月に何時間、母のところにヘルパーさんが来てもらえるかが決定する。

何もしなければ1年ごとの見直しになるが、然るべきところに相談をすれば途中のマイナーチェンジも可能である。

 

一般に、1ヶ月にMAX支給される時間数は24h×31日=744時間。

ALS患者は、特に人工呼吸器を装着した患者は、基本的に24時間の介護を必要とする。

食事・排泄・入浴など大体決まった時間に行われるケア以外にも、

痰の吸引・体の拘縮予防・コミュニケーション補助など、常時見守りを必要とするケアが数多くあるためだ。

また、特に独居や家族が長く家を空けている場合は、ベッド周りの掃除や食事の準備、洗濯など簡単な家事も行ってもらう必要がある。

 

この時間数に関して、支給を要する障害者・患者が必ずと言っていいほどぶち当たる問題が大きく3つある。

(1)時間数を支給してもらえない

(2)時間数が出ても、入れる人(事業所)がいない

(3)(2)の結果、せっかくもらった時間数を取り下げられる(減らされる)

 

 

今回はざっくりいうと(1)の話である。

なので、その支給に関する相談先である、最寄りの区役所へ足を運んだ。

 

 

現在、母に支給されている時間数は月に「678時間」。

上限MAXである744時間 - 678時間で、あと月に66時間足りない。

1日に換算すれば2時間ほど、ヘルパーさんのいない空きの時間ができるということである。

 

24時間介護が必要なのにもかかわらず、なぜ66時間を減らされているのか?

それは「介護保険」「医療保険」の壁である。

 

問題①「介護保険」の壁

65歳を超えると、「介護保険」のサービスを利用することが可能になる。

特定疾病であるALSの場合、40歳から介護保険の対象になる。

それは国民の権利としてもちろん必要な制度だ。

 

ただ、「介護保険」と「重度訪問介護」を同時間に併用することは基本的にNGだとされている。

そして、「介護保険」のサービスは各種サービスごとに「点数」で管理されており、

その点数を優先して使いきらないといけないというルールがある。

ここがネック。

 

どういうことかというと、

同じ「訪問介護」でも、介護保険と障害者支援(重度訪問介護)のヘルパーは似て非なる存在であり、

介護保険の枠内でやってくるヘルパーさんは、基本的には長くても90分で帰る。

加えて、見守り介護はルール上不可能。

そして介護保険は主に高齢者の介護が中心なので、ALSに必要な専門性とも微妙に、そして確かに異なる。

(喀痰吸引なんかも本来はやっていないので、無理やり資格を取ってもらっているが、事業所の中でも一部の人にしかできず、その人たちにしわ寄せがいっている状態)

つまり、ALS患者のケアという意味では制約が多すぎる

 

にもかかわらず、ケアプラン上は絶対に組み込まないといけないので、その分重度訪問を入れられない。

言葉は悪いが、ALS患者にとっては自分たちを助けたいんだか、邪魔したいんだかよくわからない制度なのである。

(うちに現状来ているヘルパーさんを否定しているのではなく、制度上の問題を指摘しているだけである)

 

端的にいえば、介護保険訪問介護なんて使わずに重度訪問介護で全部埋めたいのが本音だ。

介護保険のヘルパーさんは一般にスキルが高いが、1日何時間も一緒にいる重度訪問介護のヘルパーさんの方が、個々にあったケアを期待できるのは確かだし、信頼関係も構築されやすい。

これは個々のマンパワーの話ではなく、もはやシステムの問題である。

 

⇨この問題については、解決の方法が浮かんできた。

 別途詳述する。 

 

 

問題②「医療保険」の壁

介護保険とは別に、医療保険で受けられるサービスのうち、

母が利用しているのは(1)訪問看護・(2)リハビリ・(3)医療マッサージの3つ。

それぞれ30分〜1時間ほど、週3〜5で来ていただいているのだが、

これも重度訪問介護と重なるとNGとなる。

 

介護を経験したことがない人は、「それでよくね?」と思うのも無理はないが、現実はそう甘くない。

専門的なサービスの間にも、摘便時の補助、リハ・マッサージ時の喀痰吸引など、人員が必要である。

そもそも洗濯や掃除などの時間も確保したいので、この時間に済ませるのが合理的である。 

 

ちなみに家族である私は遠方での仕事も多く、介護要員としてカウントされていないため、ヘルパーさんの存在が不可欠である。

 

********

 

上記①②の問題により支給時間が減らされているぶんを取り戻そうと、

今日は貴重な休みを使っていそいそと交渉に足を運んだわけである。

 

(そもそも、去年の支給時間から無断で4時間減らされたということがあり、その誠意のかけらもない対応についてもだいぶ憤っているのだが(たった4時間というなかれ)、無駄な時間を使いたくないので目的だけ伝えに行った)

 

事前にアポを取って、エビデンスのずらりと書いた台本を用意し、

顔見知りの担当者に話をしにいった。 

(まともな担当者なら、わかりやすい資料を持っていくとありがたがってくれる。資料を出した瞬間に怪訝な顔をする担当者はハズレである)

 

交渉の結果、わかったことは以下。

介護保険と重度訪問介護の併給については難しい。不服があれば神戸市保健福祉局に意見を申立てる必要

医療保険は、削ったぶんはすぐに重度訪問でカバーできる(当たり前だ)

③リハ・マッサージについては痰吸引が必要という医師の所見が必要

 

という、ものすごく微妙な結果で終わった。

 

役所の担当の人は親身に話を聞いてくれるのだが、上記の不服を解消するための権限は特に持っていない。

こちらが制度を理解した上で、区がダメなら市、県、国に改善を申立てるしかない。 

わかってはいたのだが、とりあえずめんどくさい

でも生きるためなので仕方ない。生きることはめんどくさいことだ。

 

あと、調べてわかったことは、

そもそも「医療保険と重度訪問介護の併給はできない」という法的根拠は非常に曖昧である。

市や県をすっ飛ばし、厚生労働省に直接訴えて同時併給を認めてもらったケースもあると聞く。

よって上記医療保険の壁はぶち壊せるという希望がでてきた。

役所は上には逆らえないので、今のところこれが一番有効なアプローチのように思う。

 

ということで、戦いは続きます。

 

***

 

 

ところで、なぜこの数時間にこだわるのか?

それは、家族が入る時間を極力なくしたいというのはもちろんだが、

メインの理由は「自分たちで事業所を始めたから」である。

持続可能な形で、ヘルパーさんに給料を払えなければならないからである。

 

詳しくは、長くなるので追い追い書いていこうと思う。

今日はここまで。